鉄仙のショートショート

2012年に若年性パーキンソン病を発症。アマチュア作家。

幻日(げんじつ) 最終回

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 窓から差し込んだ朝日で私は目を覚ますと、ベッドボードに埋め込まれたデジタル時計を見た。時計の針は朝の六時を指していた。いつもならまだ布団で眠っている時間だった。
 私は目をこすりながらゆっくり体を起こすと、ホテルの小さな冷蔵庫を開けてミネラルウォーターで渇いた喉を潤した。すぐそばの窓からはビルの間に挟まれた車道をゆっくりと走る車が見えた。ビジネスホテルの窓から見える景色は、こんなものだ。
 ユニットバスから妻が出てきた。私が起きる前に化粧を済ませたようだ。もうすぐ五十歳になるが、昔とほぼ変わらぬ体型を維持している。見た目も五歳は若く見える。外に出て仕事をしていると、専業主婦よりも外見に気をつかう機会が多いので、体型の維持もしやすいのかもしれない。
「七時に出て駅前のバスに乗るから」荷物を整理しながら妻が言った。
「京都駅も二十年ぶりだね。懐かしいなぁ」私は笑顔で言った。
「バス降りたとき、見たでしょ?」
「見るだけじゃなくて、中に入らないと」
「そういうもんかね」妻は感慨深そうに言った。
「お土産買うのは、今日の夜、それとも明日?」
「明日」妻は言った。「私の職場って人多いから、空港で買う」
「分かった。それより、どこ行くか決まったの?」
「とりあえず、祇園の時計店に行く」
「時計店?」
「覚えていない?」
「全然」
「私ね。あそこに売っていた腕時計が欲しいんだ」
「どんな時計?」
「文字盤が左右反転している時計」妻は目を細めて微笑んだ。「あの時計があれば、やり直せると思うんだ」

 

 

 この作品は、京都文学賞に応募するため、京都旅行に行き、2週間でかき上げた作品を少しだけ手直ししたものです。京都をテーマに小説を書くということから、舞台として京都の地名を出すだけでは足りないと思い、京都の文化を1週間ほどで学んで観光目線を取り入れた、京都旅行に出かけたくなる作品にしました。

 今の私の作品と比べれば、表現に幅がなく、エンタメ性もかける作品であり、100点満点で40点ぐらいの作品です。今は80点の作品が書けますので、この作品で私の今の実力がだいたい分かるのではないかと思います。自分でも驚くぐらい成長しておりますので、来年の結果を期待していてください!

www.tessenshortshort.com