鉄仙のショートショート

2012年に若年性パーキンソン病を発症。アマチュア作家。

小学校へ行くまでは、カレーが嫌いでした。

 カラーライスが嫌いな人はいないと聞くたびに、違和感を覚えてしまう。

 私は小学校に通うまでカレーライスが好きではなかった。当時、私の家はあまり裕福ではなく、アリが室内を歩くようなおんぼろアパートで暮らしていた。外食は高くつくということで食事はもっぱら手作りで、料理は専業主婦の母が作っていた。

 小学校で給食を食べるようになり、カレーライスが出てきて、私は驚いた。カレーライスには豚肉が入っていたからだ。

 私の家でカレーライスと言えば、イカの足かホタテの貝柱以外の部分と玉ねぎ、ニンジン、じゃがいもしか具材はないもので、父がイカかホタテの刺身を食べる目の前で、他の家族が食べる食事だった。私の家は家長制度が残っていたため、父と他の家族で食べるものに違いがあった。当時は、そういう時代で、虐待も体罰も『しつけ』だと言えば許されるような時代だった。

 よくこの話をすると「シーフードカレーも美味しいでしょ!」と言われるが、『イカの足と野菜だけカレー』『ホタテのミミと野菜だけカレー』は、世間一般の人が想像するような色んなシーフードが入った『シーフードカレー』とは似て非なるものである。イカの足を入れたカレーはイカの色が抜けるのか、少し紫がかった色になっているし、ホタテのミミは独特な歯ごたえはあるが子供の喜ぶようなものではない。どちらも大人が珍味として楽しむものである。

 ゴロンとした豚肉のかたまりが入っているカレーライスはとても美味しくて、私は目を輝かせて喜んだものだ。それ以降、カレーライスが給食に出るたびに私は喜んだ。そして、思った。給食のカレーライスはなぜ肉が入っているのだろうか。

 家に帰った私が母に尋ねると、「私は肉が嫌いだからカレーにも肉は入れない。ホタテのミミは、お父さんが食べないから入れる」と母は答えた。

 給食のカレーライスが変わっているのではなく、我が家のカレーが変わっていのだ。普通のカレーライスというものは、豚肉か鶏肉が入っているもので、シーフードカレーのほうが珍しく、イカの足だけ、ホタテのミミだけとなれば、さらに珍しいものだった。

 このときほど、家庭という閉鎖的な環境の恐ろしさを感じたことはない。私の親が菜食主義だったら、私は菜食主義になっていたかもしれない。食育は人生の基礎を作る大事な教育なので、大人の務めとしてもっと積極的に子供たちに教えるべきだと思う。

 私から未来ある子供たちへ一言。カロリーは取り過ぎるな! 後で絶対、後悔するぞ!