鉄仙のショートショート

札幌在住会社員のショートショート置き場です。

私は芥川賞が欲しいのです。

 芥川賞と直木賞の存在は、今や一般常識です。受賞が決まればニュースで流れますし、熱心な読書家でなくても、受賞作と聞けば読んでみたくなります。しかし、それらがどんな賞で、どうやったら取れるのか、それを知っている人はあまり多くありません。私自身も小説を書くようになってから知ったぐらいです。

 恥ずかしいことに、私は小説を書くようになってからも、ほとんど文学の世界について知りませんでした。それでも、それなりに小説が書けているのですから、小説を書くことは誰にでもできることなのではないかと私は思います。これについては異論が山ほど出てきそうですが、生憎、私は人の話に耳を傾けないことで有名な男なので、そういった意見は風に流そうと思います。ビュービューてね。あえて、補足すると、私の言う『小説を書く』とは、売り物レベルかどうかは別の話で、趣味として書くことは誰にでもできるということを言っています。つまらない小説なら誰にでも書けますよ。

 さて、小説家になりたいと、ひとくちに言っても、理由は人それぞれではないでしょうか? 一番多い理由は、小さい頃から読書が好きで、憧れの職業として小説家を目指すというものです。まあ、それはそれでいいんじゃないですか。私はオススメしませんが。いや、だってね、普通に働ける人が、わざわざ小説家を目指すなんて、そりゃあ、アホだと思いますよ。小説家よりもサラリーマンの方が楽な生き方なのですから。

 私だって、本当は普通のサラリーマンを続けたかったのですが、進行性の病気になってしまったんでね。食うために嫌々、小説を書くことを選んだだけです。幸いなことに、書くことに困るっということはないようなので、天職なのかもしれません。後は時代に合うかどうかでしょうね。合えばベストセラー作家になれますが、合わなければ商業作家にすらなれません。

 世の中には、自分はコミュ障(コミュニケーション障害)だから小説家になるしかない、と言っている人がいますが、あれはどうなんでしょうね? 上手い会話文は、コミュ障の方には書きづらいと思いますよ。たぶん、会話文の質は、それまでに会話してきた量に左右されるんじゃないかな? 読書量で文章力に差が付くのと同じことですよ。多少偏見もあるかもしれませんが熱心な読書家の方って、内向的なインドア派の方が多いんじゃないかな? そういう人にとって自然な会話って、本の中に出てくる登場人物の会話が全てだったりするんですよね。でも、あれはリアルな会話ではない。リアルな会話って、前後の文脈が繋がっていなかったり、唐突な切り替えがあったり、言葉の使い方が間違っていたり、結構、メチャクチャなもんですよ。割とみんな、その場の雰囲気で流していることが多いもんです。

 だから、リアルさのない小説の会話なんて、リアルな生活を過ごしているものから見たら、こいつらドラマの見過ぎだろって思いますよ。彼らは、ここぞっと言うときに、格好いい言葉を手短に語ってくるんですよね。お前ら、絶対、台本あるだろって読んでいて思うわけです。でも、小説の世界が全てという人たちは、その違和感に気づけない。そんな読者が小説家になったらどうなると思います? より会話はリアルさを失って、リアルを置き去りにしたファンタジーになるわけです。そんなファンタジーをリアルを生きている人が面白いと思うわけがない。だから、小説はつまらないと思われて売れなくなる。

 そこに、リアルな世界を持ち込んだ小説を出したものなら、叩かれる叩かれる。こんなの小説ではないってね。小説って何なんでしょうね? 綺麗な装飾語をキラキラ散りばめて、だらだらと間延びさせれば、それが小説らしさなんでしょうかね? 

 純文学と大衆小説っていう区別があること自体、小説の幅を狭めている気がしますよ。主人公の苦悩を共に味わって、人生を学べるのに、ハラハラドキドキさせるエンタメがある。それでいいんじゃないでしょうかね? どっちか一つしか選べないようになっている今の日本小説の風潮には、私は違和感を感じますね。

 なんか話が長くなってきましたね。何を言いたいのかと言うと、私は小説を書くからには、あの有名な芥川賞を取ってみたいのです。世間では芥川賞受賞作品はつまらないと言われている芥川賞を。つまらないというか、どれもクセが強くて一般受けするとは思えない作品ばかりですよね。でも、それが文学なのかもしれません。

 ただね。私は、文学って、文章『を』学ぶものではなく、文章『から』学ぶものなのではないかなと思うんですよ。読む前と読んだ後で、読者の人生観がガラリと変わる。それこそが、純文学なのじゃないかな? そういう作品が書けるのって、私しかいないと思うんですよね。控えめに言っても!

 というわけで、私に芥川賞をください。あっ、その前に、商業デビューのキッカケとなる新人賞をください。これから公募に応募しますので、よろしくお願い致します。