鉄仙のショートショート

札幌在住会社員のショートショート置き場です。

文フリ用連載『この心臓が動く限り、俺は諦めない』14

 神経の反応速度を確かめる検査は、刺すような痛みを伴うものだった。流れる電流で体がビクンビクンと波打つように反応し、そのたびに激痛が走る。神経を直接刺激するため、歯を食いしばって我慢することもできない。まるで拷問のような検査だったが、毎月のように受けていると慣れるらしく、今となっては、それほどストレスを感じなくなっていた。

 MRIを毎月撮るようになったころには、自分の中で検査を受けること自体に抵抗がなくなっており、それまで一度も受けたことのないような検査を受けることが、ちょっとだけ楽しく感じるようになっていた。とはいえ、三十代の独身男が、休日を病院の検査で終える人生は、どんなにみじめなものだろうか。今日こそは病気の原因が分かって、この苦しみから逃れられるはずだと期待しながら病院を訪れ、医者から「経過観察しましょう」と言われて肩を落としてうなだれて帰る土曜の午後。俺の精神は限界の一歩手前まできていた。

 待合室で見つけた医療セミナーのチラシを担当医に見せて、セカンドオピニオンの相談をしようと思ったが、今日に限って担当医が不在で他の医者の診察を受けることになった。セカンドオピニオンを受けるということは、他の医者の意見を聞きに行くということだ。担当医もあまりいい気がしないだろう。今後の関係に影響があってはまずいので、俺は相談するかどうか迷っていたが、ちょうどよく目の前には担当医ではない別の医者がいる。別の医者の意見を聞くという意味では同じだろうと俺は思ったので、セカンドオピニオンの代わりに俺の病気にいての意見を聞くことにした。

 同じ病院の医者ということもあるのか、最初は、担当医の判断や検査方法については何も言えないと言っていたが、オフレコにするという条件で一個人の意見としていくつか可能性のある病名をあげてくれた。聞きなれない病名もいくつかあったが、聞いたことのある病気はネットで調べて出てきた、いわゆる難病と言われる病気ばかりだった。

 家への帰り道、俺はポケットに入れたチラシを広げて病院の場所を検索した。偶然なのか、必然なのか、その病院は自宅と会社の間にあった。ここなら通勤ルートなので、簡単に通える。休日も診察しているらしく、通いやすい。ホームページに予約制と書かれていたので、俺は迷わず病院に電話をかけた。 

 

文フリ用連載『この心臓が動く限り、俺は諦めない』15へ続く