鉄仙のショートショート

2012年に若年性パーキンソン病を発症。アマチュア作家。

小説

小説『ロックダウン~東京・都市封鎖』のプロット②

第二章 今から一年前、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシン研究で注目されている佐藤助教授は、学会で研究結果を発表していた。参加者の中では唯一の女だったが、この業界は女だから持てはやされるわけではなく、そういう意味では、男女平等の世界だった。オ…

小説『ロックダウン~東京・都市封鎖』のプロット

第一章 大陸から発生した未知のウイルスが世界に蔓延し始めて二ヶ月が経つ頃には、日本の首都・東京でも連日のように百人以上の感染者が発表されるようになっていた。世界各国で始まっていた都市封鎖も、日本で最初に感染者が発表されてから一ヶ月後には、東…

太郎くんと花子さん

// 月曜日。教室には、10人の生徒がいました。そのうち、Aくんだけがテストで100点満点を取ったので先生はAくんを褒めました。 火曜日。Aくん以外の生徒の保護者が学校を訪れ「Aくんだけを褒めるのはヒイキだ!」と先生に訴えました。先生は、Aくんは頑張っ…

幻日(げんじつ) 最終回

幻日(げんじつ) 第16回はこちら // 窓から差し込んだ朝日で私は目を覚ますと、ベッドボードに埋め込まれたデジタル時計を見た。時計の針は朝の六時を指していた。いつもならまだ布団で眠っている時間だった。 私は目をこすりながらゆっくり体を起こすと、…

幻日(げんじつ) 第16回

幻日(げんじつ) 第15回はこちら // 私は、清水寺を目指して、気の遠くなるほど続いた坂道を上っていた。清水寺に近づくにつれ観光客は増え、参拝を終えた観光客が前から笑顔で歩いてくる。学校の行事なのか、小さな子供たちが、私を追い抜いて行った。定年…

幻日(げんじつ) 第15回

幻日(げんじつ) 第14回はこちら // 私は惰性で歩き続けていた。夢に出てきた腕時計に運命を覚え、何らかの奇跡が起きると信じて京都に来た。しかし、何も起きなかった。「おいでやす。冷たい抹茶いかがどすか?」若い女性の声が聞こえた。 声のする方に目…

幻日(げんじつ) 第14回

幻日(げんじつ) 第13回はこちら // 八坂の塔から少し歩くと、右手に手作り時計の店が見えてきた。明るめの黄土色の壁に褐色の柱の店だ。私が探し求めていた腕時計のある店だ。 店には面白いデザインの腕時計が多く陳列されていたが、その腕時計は他とは違…

幻日(げんじつ) 第13回

幻日(げんじつ) 第12回はこちら // 八坂庚申堂を出て右へ折れ、車一台がなんとか通れるほどの道を歩き出すと、空を大きく感じる祇園の町並みに、突如、大きな建物があらわれた。法観寺の八坂の塔である。 圧倒的な存在感でそびえ立つ黒い五重塔は、祇園の…

幻日(げんじつ) 第12回

幻日(げんじつ) 第11回はこちら // 私は八坂神社を南下して祇園の町を歩いていた。祇園の町並みは、時代を感じさせる風情のあるものだ。ところどころ現代様式の建築を挟んではいるが、視線を屋根まで上げれば瓦屋根が、少し下ろすと細く短い窓が並ぶ虫かご…

幻日(げんじつ) 第11回

幻日(げんじつ) 第10回はこちら // 二分ほど北へ歩いて、細長いビルの前についた。一階の入り口の前にはいくつも着物が飾られている。私たちは着物のレンタル店にやってきた。「レンタル着物?」妻は戸惑っている。「うん。着物に着替えよう」私は言った。…

幻日(げんじつ) 第10回

幻日(げんじつ) 第9回はこちら // 八坂神社の中心には、無数の白い提灯で覆われたを舞殿があり、そこから四方へ石畳の道が延びて北側に本殿がある。境内には着物姿の観光客が大勢歩いている。「何もないや」妻は舞殿の中をのぞいて言った。「舞殿って書い…

幻日(げんじつ) 第9回

幻日(げんじつ) 第8回はこちら // 東寺から歩いて十五分。私は京都駅に戻ってきた。時間は昼の十二時を少しまわった頃で、平日の昼だというのに、駅には溢れかえるほどの人で賑わっていた。 京都駅の正門である烏丸口に出れば飲食店もたくさんあるだろうと…

幻日(げんじつ) 第8回

幻日(げんじつ) 第7回はこちら // バスを乗り継いで四十分。両端に『東寺』と書かれた提灯を吊した門が見えてくる。東寺の北東に位置する慶賀門である。門をくぐって駐車場を抜け、拝観受付で拝観料を払い、柵で覆われた有料ゾーンへと入った。最初に目に…

幻日(げんじつ) 第7回

幻日(げんじつ) 第6回はこちら // 楼門と同じく黒く見えた三光門も、近づいてよく見ると茶褐色であった。色合いにムラがあるので、楼門と同じく長年の雨風により、色に深みが増したのだろう。金色だけで縁取られていた楼門と違い、こちらはとこどころエメ…

幻日(げんじつ) 第6回

幻日(げんじつ) 第5回はこちら // 粟餅所・澤屋を出て信号を渡り、私は北野天満宮の一の鳥居の前に立った。重厚さを感じさせる石でできた『一の鳥居』の前で一礼すると、右手前に赤みがかった松が目に入った。北野天満宮の御神木である影向松(ようごうの…

幻日(げんじつ) 第5回

幻日(げんじつ) 第4回はこちら // 嵐電に乗り北野白梅町まで揺られ、東へ五分ほど歩くと学問の神様で有名な菅原道真を祀った北野天満宮が見えてきた。時間は午前九時と早い時間だったが、すでに多くの観光客が参拝に訪れているようだった。 車道を挟んで信…

幻日(げんじつ) 第4回

幻日(げんじつ) 第3回はこちら // 出口に向かって歩き出した私の背中を、誰かが引っ張った。振り返ると、死んだはずの若かりし頃の姿の妻が眉間にしわを寄せて立っていた。「ちょっと。まだ、ツクバイ見てないでしょ」妻は、戸惑う私を気にもとめずに、厳…

幻日(げんじつ) 第3回

幻日(げんじつ) 第2回はこちら // 食事を終えると、私は京都駅前のバス停に向かった。 バス停には電光掲示板が備え付けられており、次に出発するバスの時刻が表示されていた。時間を確認するために左うでに目をやって、溜め息をついた。またしても、私は腕…

幻日(げんじつ) 第2回

幻日(げんじつ) 第1回はこちら // 私は朝食を取るために和洋ビュッフェの店へと入った。黒いお盆の中央に、白く丸い皿を一枚だけ載せ、西京焼き、だし巻き卵、漬物、京野菜を使ったおばんざいを綺麗に並べると、白米と味噌汁を手前に載せる。バランスの取…

幻日(げんじつ) 第1回

// 窓から差し込んだ朝日で、私は目を覚ましてしまった。 高級ホテルの眺望を満喫するために、カーテンをあけてライトアップされた京都タワーを見ながらベッドに入ったのが、間違いだったのかもしれない。 まどろみの余韻に浸りながら時刻を知るために顔だけ…

小説とは何かについて。

「人の心はもろいからね。ほんの些細なことでも壊れてしまうんだよ」明神は、皿の上のスパゲッティーをくるくると器用にフォークで巻き取って口へと運んだ。 「宮田さんのことですか?」大野は、明神の顔をのぞき込んだ。 「彼もそうだけど、君も……」明神は…

境都(きょうと)

私には、住みたいけれど、住めない街がある。 今から二十年と少し前。私は高校を卒業すると、生まれ故郷の札幌を離れて和歌山県の高野山に移り住んだ。仏教の中でも一部の限られた者しか学ばない密教を学ぶためだ。 高野山の上には、寺院と宿坊、最低限の商…

作風を完成させるに至った12冊

会社員をやめるとき、私にも人並みに不安はあった。 本当に毎日小説が書けるのだろうかという不安だ。 金銭的な不安もあったが、映画館でエンドロールが終わるまでトイレを我慢できるのかどうか程度の不安でしかない。貯金が潤沢というわけではなく、一年先…

すべてがFになる

森博嗣さんの『すべてがFになる』を読み終えました。 すべてがFになる (講談社文庫) 作者: 森博嗣 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1998/12/11 メディア: 文庫 購入: 16人 クリック: 241回 この商品を含むブログ (589件) を見る タイトルだけは前から知って…

金のリンゴの木

ある辺境の地に100本のリンゴの木が生えていました。 そこに旅人がやってきて、リンゴを1つ取って食べました。 「美味しいけど、普通のリンゴだ」 「おや、旅人の方ですか?」 旅人が振り返ると、そこには真っ白な長い髪と髭のおじいさんが立っていました。 …

ホンノキ

午後九時。小さな本屋『カミクラ書店』を覆ったシャッターの隙間から明かりが少しだけ漏れていた。営業を終了した店には店長の貫田と常連客の真島が腰の高さほどのカウンターを挟んで雑談に花を咲かせている。 「貫田さん。俺は、昔の文豪が書いたような人間…

私の受賞作が冊子に載りました!

夏の公募で入選して、副賞(?)として七夕イベントで配られる冊子を頂きました。中々届かないので忘れられているのかなと思っていたのですが、発行自体が遅れていたそうです。 私の作品がネットではなく、リアルでお披露目されるのはこれが初めてとなります…

私たちの電子書籍が発売されました!

以前、書きました電子書籍ですが、ついに発売されました! 収録作品は全14作となります。以下にタイトルと作家名を挙げておきます。 スナック虹へようこそ 貫洞沙織(id:keisolutions)初恋の結末 ハナヅキアキ星くずの夜 腹痛特急列車 undoodnuぴよぴよ 新…

手紙預かり屋

今週のお題「あの人へラブレター」 わたあめのようなふわふわと軽い雪が降る中、男は真っ赤な郵便ポストの前に立っていた。黒いコートにしがみつく白い雪は体温ですぐに溶け、透明な水となってコートの上をするりと流れ落ちていく。頭の上にそっと積もった雪…

実録! お天気お姉さん24時?

お題「ショートショート『天気予報』」 お天気お姉さんを知っているだろうか? テレビで天気を予報する女性のことだ。最近では若くてかわいらしい女性の職業の一つと認識されているが、その実態を知るものは少ない。今夜は、今一番有名なお天気お姉さん安藤…