鉄仙のショートショート

2012年に若年性パーキンソン病を発症。アマチュア作家。

太郎くんと花子さん

 

 月曜日。教室には、10人の生徒がいました。そのうち、Aくんだけがテストで100点満点を取ったので先生はAくんを褒めました。

 火曜日。Aくん以外の生徒の保護者が学校を訪れ「Aくんだけを褒めるのはヒイキだ!」と先生に訴えました。先生は、Aくんは頑張って100点満点を取ったので褒めたと弁解しましたが、保護者は「100点満点をとらなくても、私の子供も勉強を頑張ったから褒めるべきだ」と訴えました。先生は困りながらも、Aくん以外の9人の生徒を褒めました。

 水曜日。Aくんの保護者が学校を訪れ「テストで点数を競わせているのに、一律に評価するのはおかしい。これでは、努力が報われない!」と訴えました。

 木曜日。先生は、学校に来ませんでした。

 金曜日。先生は、学校に来ませんでした。

 土曜日。先生は、学校に来ませんでした。

 日曜日。先生は、この世から去ってしまいました。

 

  太郎くんは、花子さんとデートをしました。

 太郎くんは、花子さんのことが大好きでしたが、ちょっとしたことで喧嘩をしてしまいました。

 翌日、太郎くんは、花子さんに謝りましたが許してもらえませんでした。

 1ヶ月後、太郎くんは、花子さんに謝りましたが、許してもらえませんでした。

 半年後、太郎くんは、花子さんに謝りましたが、許してもらえませんでした。

 1年後、太郎くんは、花子さんに謝りましたが、許してもらえませんでした。

 2年後、太郎くんは、花子さんに謝りましたが、許してもらえませんでした。

 3年後、太郎くんは、花子さんに謝りましたが、許してもらえまえず、この世から去ってしまいました。

 

 太郎くんは、先生をしていました。

 花子さんと喧嘩をしたちょうど3年目の日曜日に、この世から去ってしまいました。

 

 生徒の保護者や花子さん、一人一人にとっては小さなことでも、太郎くんにとっては抱えられないほど大きなものになっていたのです。 

 太郎くんは、この世を去らなくてはならないほど、悪いことをしたのでしょうか?

 生徒や保護者、花子さんは、太郎くんがこの世を去って、気が晴れたのでしょうか?

 

 誰か一人でも、太郎くんに手を差し伸べていたら、こんなことは起きなかったのかもしれません。