鉄仙のショートショート

札幌在住会社員のショートショート置き場です。

さすらいリーマン東京旅行2日目『弁天の沙織さん』

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 晴天で迎えた東京旅行二日目。今日は、美人女社長の沙織(id:keisolutions)さんと東京ぶらり旅だ。彼女とは今年の2月に一度会っており、会うのは今回で二度目となる。前回、お会いした時はもう一人の美女Mさんと3人で飲んだので、沙織さんと二人きりになるのは初めてだった。

からくり櫓時計

 朝9時半。待ち合わせ時間の30分前に、俺は日本橋からくり櫓(やぐら)時計前に立っていた。このからくり櫓時計は日本橋でも有名なシンボルであり、事前にネットで調べて俺が指定した場所だった。早めに着いたことを沙織さんにメールで伝え、俺はからくり櫓時計を日本橋の風景と共に写真に撮っていた。

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 フレーム内に収まるからくり櫓時計、そして道路を挟んだ斜め向かいの先にあるもう一つのからくり櫓時計……? 俺は自分の目を疑った。なんとからくり櫓時計は二つあったのだ。つまり、待ち合わせ場所が二つあることになる! 焦った俺は目の前のからくり櫓時計の写真を送って、からくり櫓時計が二つあったことを沙織さんに伝えた。

 

 ピンポーン!

 

 すぐにメールが返ってきた。メールにはもう一つのからくり櫓時計が映っていた。

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 沙織さんは、すでに道路を挟んだ先のからくり櫓時計の前にいたのだ。会うのは久しぶりだったが、長年の知り合いのように軽く挨拶だけして、当たり前のように東京日本橋七福神巡りを始めた。

七福神巡り

 七福神巡りは俺の提案だった。来年は俺だけでなく沙織さんにとっても転換期である。沙織さんは海外で新しいビジネスを始め、俺はプロの小説家を目指す。お互いの人生が上手くいくことへの願掛けも兼ねていた。

 沙織さんも小説家を目指していて、着物を着始めた理由が小説家になった時のためだという話をしてくれた。俺も小説家になったら着物を着ると決めていたので、小説家=着物という同じイメージを持っていたことで意気投合する。類は友を呼ぶではないが、お互いに協調性がない変人であるところなどがよく似ており、友人というよりは戦友だと思っている。

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 ブログのイメージとは違い、真面目にお祈りする沙織さん。小さなお社にも丁寧にお辞儀をするその姿勢は、本当に素晴らしく、ちょっと愛らしく思えた。以前会った時も思ったが、沙織さんは常識人で根は真面目だ。持病に負けず、新しいことへの挑戦をやめない姿勢には、いつも勇気づけられている。

 それに比べ、俺の不真面目さと言ったら……。俺は最初から神頼みするつもりはなく、神社に溜まる信心深い人たちが残した念をごっそり奪い取るという荒技をするために神社巡りをしていた。我ながら強欲である。

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 日本橋には、歩いていける距離に七福神を奉る神社が固まっており、日本で最も手軽に七福神巡りができる場所として有名である。俺たちは御朱印帳を片手に、それぞれの神社で御朱印と呼ばれる判子をもらい歩く、スタンプラリーみたいなことをしながら、七福神のご利益を授かるため日本橋を歩いた。この日は本当に天気が良く、空気も澄んでいて、とても気持ちが良かった。現実的な下町と非現実なパワースポットの共存する風景を見ながら見知らね土地を美女と散歩。これまた非現実的な体験で楽しい。

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 俺たちは、最初にもらった神社の地図を元にまわったのだが、何度も道に迷った。現在進行形で人生に迷いまくっている男女の旅だ。今思えば、道に迷って当然なのかもしれない。

「私、地図が読めない女だから、鉄仙さんが頼りだからね」

「ごめん、通り過ぎた。今のところを曲がるべきだったみたい……」

「ちょっと、何やってんのよ? ちゃんと地図見てよ!」

「俺、目移りしやすい男だから(笑)」

「よく知っている!」

 今や会社の同僚だけでなく、ブログ読者にとっても常識となっているが、俺は好奇心旺盛な人生の冒険家だから、ちょっとだけ目移りしやすい。ちょっとだけ……。

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 そんなこんなで雑談に花を咲かせながら訪れた4つ目の神社でトラブル発生! なんと社務所が開ていない! 時間が早いのかと思い、俺たちは近くの今半ですき焼きコロッケを買い食いしながら、先に他の神社をまわることにする。

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 朝11時。待ち合わせ場所だったからくり櫓時計が動く時間になった。もちろん、俺たちは、七福神巡りを中断して、からくりの動くところを鑑賞することにした。

 光ったと思ったら回転し始める人形たち。中段から新しい人形が出てきたかと思うと、屋根がせりあがり、天井がさらに高くなる。地味ではあるが、街中でこれを見られたのは良かった。地元民には見慣れたものだろうが、観光客にとってはテンションが上がる貴重なものである。

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 俺たちは、からくり鑑賞後、七福神巡りを再開した。

「あの夜さ。道分からないだろうから、私が宿泊先のホテルまで送ると言ったら全力で拒絶したよね?」

「そんなことあったっけ?」

「まあ、今ではネタ話として女子会で使わせてもらっているからいいけど」

「えっ? もしかして悪口言われている?」

「いや、むしろ逆。危機回避能力が高いと評価されているよ」

 実際のところ、俺が沙織さんと夜の闇に消えて行かなかったのは、俺がチキンだったためだ。

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 その後、お互いに仕事の話をしていたはずなのだが、いつに間にか、下ネタになっていた。「騎乗位からバックで……」と話し出す沙織さんの話に驚きながらも楽しませてもらった。ちなみに、朝から騎乗位という言葉を聞いたのは、生まれて初めてである。

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 ちなみに、今回立ち寄った神社の中で、最もパワーを感じられたのが、この笠間稲荷神社のこの御稲荷さん! 

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 久しぶりに背中がゾクゾクするものを感じた。

 以前、訪れた熱田神宮は陽の気が沢山だったが、こっちは神社では珍しい陰の気。これほどのものは滅多にないので、普段身につけているブレスレットを依り代にして、根こそぎ吸収させてもらった!

 ここは性質上、すぐにパワーが溜まる場所だと思われるので、来週にはパワーも戻っているだろう。この御稲荷さんは依り代としてかなりのものなので、うつ病や難病などで困っている人にオススメな場所だ。健康な人には逆に体調が悪くなるかもしれないから、この神社に行っても御稲荷さんには近づかない方がいいだろう。

 この写真を見てゾクッとしたら、是非、足を運んでほしい。波長が合う人は写真を見ただけで寒気がしてくるはずだ。もしかしたら、この写真だけでもご利益あるかもしれないから、スマホの待ち受けにしてみるのもいいかもしれない。

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 結局、元々無人である茶の木神社を除いて、松島神社だけ社務所が開いていなかった。時間が早かったのかと思い最後にもう一度回ったのだが、開いておらず、この日、七福神がそろうことはなかった。

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 七福神巡りは次回に持ち越しということで終えて、俺たちは次の目的地に向かった。

「すみません。駅にはどうやって行けばいいですか?」 

 コンビニでトイレを借りて、外に出ると、俺は知らない女性に道を聞かれた。俺は北海道から観光で来ている旅行者だ。この場で最も土地勘のない男である。今一番、道を聞いてはいけない人物だ。

「え~と……、どこの駅ですか?」

「どこでもいいので駅に行きたいんですが……」

 道を聞かれて困る俺と、困って道を尋ねる女性。

「駅といっても沢山あります。どこへ行きたいんですか? 東京駅に向かうのならあっちの方に駅があります」

 俺の次にコンビニから出てきた沙織さんが、俺の後ろから、的確な道案内をする。

「ありがとうございます」

 女性は、東京駅の続く地下鉄の駅へ向かって歩ていった。

「あの女性、今一番道を聞いてはいけない人に道を聞いたね」

「やっぱりそうだよね。俺、地元の人間じゃないのにね。こんだけまわりに人がいて、なんで俺に聞いたんだろうね?」

「話しかけやすいんでしょ。鉄仙さん、性格は最低だけど顔は話しかけやすい顔だから」

「俺さ。本当によく話しかけられるんだよね。そんなに話しかけやすい顔している?」

「うん。顔はね。でも、性格は最低だけどな」

 そうだね、プロテインだね(byパッション屋良)。

イデミスギノ

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 ネオ、マリエと二人で合計4種類のケーキを頼み、お互いに頼んだケーキを味見しあった。

 特に緑色のバジルビスキュイの上に、マンゴームースを真っ白なフロマージュムースで包んで乗せたネオは最高に美味い! 店内は撮影禁止のため写真はないが、また東京に来ることがあれば絶対食べたい一品だ。

 マリエはピスタチオムースをピンクのかわいらしい野いちごムースで包んだ酸味と濃厚さを併せ持ったケーキである。

 店が混み始めたので、俺たちは話を切り上げて外に出た。すると、またまた、俺は未知を尋ねられる。今度は外人さんらしく、英語での質問だ。いやいや、俺は旅行者だし、英語も分からん。少し戸惑っていると、隣の沙織さんが流ちょうな英語で返答をする。くぅー、格好いい! さすが一人で海外旅行に行くだけある。頼りになる姉さんだぜ! 

三井記念美術館

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 『超絶技巧!明治工芸の粋』を見てきたのだが、日本の技術の高さに、ただただ関心させられた。特に自在と呼ばれる今でいうフィギュアの元祖となる関節が動く虫とか凄すぎて驚いた。俺が展示物を見て感心していると、横にいた知らないおばさんが展示物についての色々説明をしてくれた。なんと親切なことか。以前、九州のブロガーさんが東京の人は冷たいと言っていたが、全く違った。

「ねえねえ、ちょっとアレ見て」

「アレってどれ?」 

「あの女性のお尻。ああいうの好きなんでしょ?」

 いやいやいや、何言っての! 確かに俺は尻派だけど、美術館で女性のお尻を見たりしないから!

「いや、あれはあんまり」

「私はああいう熟女の垂れた尻が好きだけどな」

 えー、沙織さん、何言ってんの? というかどこ見てんの? エロおやじよりエロいよ!

「俺はしっかりとしたお尻が好きなんだよ。それに、昨日、飛行機でキャビンアテンダントさんのお尻をじっくり見たから」

「なるほどね」

「うん、まあね」

「ナイスヒップってやつだね?」

 はるばる北海道から東京まで来て、美術館の中で美女とお尻について語ることになるとは、なんか色々ぶっ飛んでいるわ俺の人生!

かんだやぶそば

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 さて、ここからは沙織さんの案内で東京観光が始まる。まず立ち寄ったのが店員さんの独特なオーダーの言い方がじわる蕎麦屋かんだやぶそば。室内は広く高級感があり、蕎麦も高い。この写真の天ぷらそばが1,720円もする。量も少ないのにこのお値段。味はと言うと、美味しいことは美味しいが、コスパは悪い。雰囲気込みでの値段ということなのだろうか?

 蕎麦を食べながら、沙織さんと小説の執筆についてあれこれ話しあった。作品の作り方や推敲の仕方、執筆ペースなど大変参考になることを聞けた。年一冊しか小説を出せないのではペースが遅すぎると言われた時、俺は自分の甘さを痛感させられた。 

ショパン

 やぶそばを出て向かいに昔懐かしい喫茶店があった。店の前で見物していると、店から出てきた知らないおじいさんが、お店の歴史についての色々説明をしてくれた。やっぱり東京の人は親切だ。三井記念美術館といい、知らない人に話しかけられる一日だ。

 沙織さんは俺自身が話しかけやすい顔だと言っていたが、たぶんそれだけでない。沙織さんが美人だというのもあると思う。美女と野獣ではないが、美人と一緒に歩いている不細工な男は性格がいいという憶測によるものだと思われる。しかし、実際のところ俺はあまり性格が良くない。つまりいいところなしだ!

 俺たちは、おじいさんに勧められ、少しこの店でお茶することにした。俺は普段コーヒーを飲まないので味についてはよく分からないが、美味しいらしい。創業昭和8年の喫茶店だということなので、たぶん有名店なんだと思う。

デビルクラフト

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 沙織さんに連れられて最後に訪れたのが、ここデビルクラフト! 3種類のクラフトビールを飲んだが、3つとも色は同じなのに香りと味が全く違って面白かった。今までのビールのイメージを払拭する体験だった。

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 今回は沙織さんの知り合いであるマー (id:kun-maa) さんのおすすめビールを飲んだが、このセレクトがまた的確で、さすがクラフトビール狂と驚かされた。今回は沙織さんとサシで飲んでいたため、その場にマーさんはいなかったのだが、沙織さんがマーさんにメニュー表を送ると、すぐにおすすめビールの返信がきた。 

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 特にマンゴー、パッションフルーツの香りがする『ブレイキング バドIPA』が気に入った。この『ブレイキング バドIPA』は、人気海外ドラマ『Breaking Bad』にちなんで命名されたものだった。

 実はこの『Breaking Bad』にちなんで命名されたものであるということは、旅行から帰っきてから知った。この『Breaking Bad』を俺はまだよく知らないが、ある女性がこの旅行に行く前に一番面白い海外ドラマだとすすめてくれたものだった。知らずにすすめられて飲んだビールが、すすめてくれたドラマと関係していたとは、運命ってやつは本当にあるんだなと笑うしかない。 

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「マーさん呼んだら?」

「飲みたいビールがないみたいだから、来ないと思う」

 う~ん、残念。こんなに美味しいビールを教えてくてたマーさんに一杯奢りたかった。乾杯をした時、この場にMさんがいないのが残念だという話になった。

「そういえば、Mさん美人で驚いたでしょ?」

「顔も知らずに会う約束したんで、後で送ってもらった写真見て驚いたよ! 実際会ったら、美人でさらに驚いた!」

 あの頃は、東京の女性はみんな美人なんだろうと思っていたが、実際はそんなことなく、今回の旅行でも美女は数人しか見なかった。

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「なんで営業やらないの? そんだけ話せれば十分営業できるよ? 今日一日だけでも8:2で話しているよ。もちろん鉄仙さんが8」

 相変わらず話してばかりで、人の話を聞かない癖が治らないことに、俺は反省した。とにかく俺は人と話すのが大好きで、相手が女性で、美人ときたら、楽しくて仕方がない。

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 沙織さんの話で、印象的だったのは、「自分が嫌いなことは、会社の人にもさせない」ということと、「天気が荒れて自分の会社に所属する人たちが遅刻するおそれがある時は、必ず取引先に一方を入れておく」ということだった。クラフトビールを飲みながら仕事に対する姿勢についてお互い色々話した。

 俺たちはブログで知り合った仲だが、会話のほとんどが仕事に対するものばかりで、ブログについてはほとんど話さなかった。なんだかんだと言っても、俺たちは仕事人間なんだなと神田で飲みながら終えた楽しい一日だった。

 ……ちなみに、ここ掛けてあるからな。「なんだかんだ」と「神田」を!

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 俺は沙織さんと知り合えて本当に良かった。沙織さんは有名ブロガー・社長・美人であり、元お騒がせブロガー・平社員・(色んな意味で)魔王な俺とは真逆の立場であり、普通なら接点がない人だ。俺がショートショートの存在を知るキッカケになったのも彼女のおかげであり、長編が書けない俺が小説家を目指せる入り口を見つけられたのは彼女のおかげである。七福神巡りにかけて、今後は、沙織さんのことを弁天さんと呼ぶことにする(心の中で!)。

 それにしても、ブログでの出会いが、人生の転機になるとは、人生とは分からないものだ。

「いやぁー、ブログって本当に素晴らしいものですね」(by俺)