鉄仙のショートショート

札幌在住会社員のショートショート置き場です。

ヒヒイロアカネモドキ

お客さん、あんたついているぜ。

このヒヒイロアカネモドキは今日手に入ったばかりなんですぜ。

いやいや本当にこれを食べることができるなんて幸せものだ。滅多なことじゃあ、お目にかかれない一品ですぜ。

さてさてどうする? 焼くかい? 煮るかい? まさか生でとか言うんですかい? いくら鮮度がいいたってよ。さすがにこれを生で食べるのはね。うちも食中毒とかは避けてえんで、できれば火を通したいんですがね。

ええ、ええ、それがいい。ここは煮るのが一番だ。味付けはどうするんでえ? 臭みがあるようなんで醤油で煮るのがいいんじゃねえかな?

おっ、お客さん、通だね。味噌煮込みがご希望ですかい。分かりやした。では軽くショウガと一緒に水煮して、臭みが取れたら味噌でぐつぐつと煮込みましょうかね。よし、そうときたら早速下ごしらいだ。

そうそう、お客さんお時間の方は大丈夫ですかい? 今から皮を剥いでとなると少々お時間がかかるんですが……。

えっ? 客さん、遠方からの旅行者だったんですか。それならこの辺を少し観光している間に料理しておきますぜ。なんせ煮込みだから時間がかかって仕方がねえ。そうですね一時間半は待ってもらいたいですね。

長い? お客さん馬鹿言っちゃいけねえ。こんな珍しい物を食べられる機会なんてそうそうねえんですぜ? 食べないと絶対後悔しますぜ?

よしきた。それじゃあお客さん。だいたい一時間半後にまたここに来てくれますかね? しっかり料理させてもらいますんで。

ええ任せてくだせえ。それじゃあ、いってらっしゃいませ。

 

おっ、お帰りなせえ。できていますぜ。とっておきのヒヒイロアカネモドキの味噌煮込みが。ささ、奥のテーブルに座ってくだせえ。これからでっけえ鍋でお出ししますぜ。

いやね、実を言うと本当にこれを食べる方がいるとは思っていなかったんですぜ。なんせ、あんななりなんでね。とてもじゃねえが食べてえとは思えんのです。

どんな味かですって? おいらも知らんのです。見るのも触るのも今日が初めてなんでね。

味見? あんななりをしているんですぜ。とてもじゃねえけど味見をするのも嫌になるってもんだ。見た目が……あの銀色の皮がね。世間ではグレーとか言われているようですが、あれはどう見てもグレーじゃなく銀色ですぜ。

ヒヒ色じゃないのかって? なんですかヒヒ色って? 一体全体それはどんな色なんですかい?

ヒヒ色のアカネに似ているから、ヒヒイロアカネモドキなんだろって? ヒヒ色のアカネって何ですかい? そんなんおいらが聞きてえぐれえだ。

そもそも、この名前だって、おいらが思いつきでつけたもんですぜ。世間ではグレイとか言われているようですがね。

えっ、どこで手に入れたのかですって? ああ、あれは近くの山に落ちた円盤の形をした乗り物の中で見つけたんでさあ。テレビで見た通り真っ黒な目が大きくて驚きましたぜ。

えっ、宇宙人? やだなあ、お客さん。

これはヒヒイロアカネモドキですぜ。