鉄仙のショートショート

札幌在住会社員のショートショート置き場です。

幸せはここにある。

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 今日、会社で面白いやり取りがあったので、ここに残しておく。

  俺の会社は明日が仕事納めだ。しかし、一日中大掃除なので、実質的に仕事は今日で最後となる。そのため、いつも以上に忙しい。そんな中、横から驚く会話が聞こえてきた。 

AZさん「幸せって、どこにある?」

YKさん「幸せは、ここにあります」 

 ん? 

 今、なんと言いました?

 状況はよく分からないが、俺の職場で、30代の既婚女性AZさんが、20代の独身女性YKさんに「幸せはどこか」と聞いたようだ。

 慌てて横を見たが、二人は書類棚の前に立っており、いつもと変わらない様子である。俺の聞き間違いだろうか? 冷静に考えれば、仕事中に「幸せって、どこにある?」なんて言う訳がない。そうなると、聞き間違いをした俺自身が潜在意識化で「幸せ」について悩んでいるのだろうか?

 それにしても、「幸せって、どこにある?」と子持ちのお母さんであるAZ先輩が、独身女性のY後輩に聞いたとしたら、これは深刻な事態である。久しぶりに特命係である俺の仕事ではないか? いや待て。なぜあの時、YKさんは「ここにあります」と即答できたのだろうか? そして、二人は書類棚の前に立っていたのだろうか? 

 あっ! 俺は答えに気付いてしまった。

 分かってしまうと面白くて仕方がない。こんな偶然なかなかない。慣れというものは恐ろしいものである。俺は自分の中でじわじわと来る面白さに笑いがこらえなくなってきた。この笑いを共有したい! 聞き間違いの可能性も潰しておきたい! という衝動にとられ、仕事中なのにも関わらず、横を通ったAZさんを呼び止めて確認してしまった。

俺「AZさん。さっき、『幸せって、どこにある?』って言いました?」

AZさん「うん。あっ! 『幸せってどこにある』って言った(笑)」

俺「『幸せ』って取引先の略称ですよね?」

AZさん「そうそう。でも、『幸せって、どこにある?』って聞いたら、病んでいる人みたいだね(笑)」

 AZさんも、俺の聞いた意味にすぐに気がついたらしく、笑い出した。

 横で聞いていたYさんも、気づいたらしく、笑い始める。

AZさん「私たち請求担当はこの取引先を略して『幸せ』って呼ぶのが当たり前になっているからね」

俺「みなさんは普通に会話していましたが、俺はさっきから面白くて、これ、じわじわきません?」

AZさん「来る! じわじわ来るね!」

YKさん「面白い!」

 3人で大笑いする。

 少し遅れて、YMさんが納得する。

YMさん「ああっ、なるほどね。あんたたち『幸せ』、『幸せ』で何を笑っているのかと思ったけど、そういことね。鉄仙くん、良かったね。幸せ、ここにあって」

俺「そうですね。うちの会社に幸せがあって良かったです!」

YMさん「鉄仙くん。幸せ欲しくなったら、そこにあるからいつでも見に行っていいよ?」

俺「ありがとうございます。幸せ欲しくなったら見に行きます!」

  俺は請求担当ではないので、取引先である『アットホーム幸せ』(仮名)の資料を見ることはない。しかし、確かに『幸せ』はそこにあった。こうやって笑いながら仕事できることは、幸せそのものだ。やっぱりいい職場だ!

 

(この作品はフィクションであり、 実在する人物、団体等とは一切関係ありません)