鉄仙のショートショート

札幌在住会社員のショートショート置き場です。

『惚れた尻に敷かれる』①

 私はどうしようもないほど女に弱い。履歴書に弱点を書く場所があったのなら、私はそこに『女』と書かなければならないだろう。そんな私は面食いなので美女に弱い。顔さえ良ければというところがあって体型なんて全く気にしない。胸の大きさとか、尻の形とか、そんなの二の次であって、やっぱり一番好きなのは顔なのだ。しかし、今まで好きになった女の写真を見るとこんな顔だったかなと自分の記憶に疑いを持つことになるので、自分が思っているより顔を見ていないのかもしれない。

 それなら私は彼女たちのどこに惚れたのだろうか。外見ではなく内面、つまり性格だろうか。私は物事をハッキリ言う我の強い毒舌な人が好きだ。しかし、毒舌を吐いている女を見るのは楽しいが、いざ自分が毒を吐かれる対象になった時、それは全く気持ちいいものではなかった。

 もうこうなると自分で自分がよく分からなくなる。『人を好きになるのに理由がいますか?』ということだろうか。そんなことをあれこれ仕事中に考えていたら、大きくて美しい丸みを帯びた尻が私の視界の端をかすめるように横切った。

 会社が支給した制服のタイトスカートがいまにもはち切れそうな大きな尻のラインを露わにし、揺れる尻の美しさを魅力的にしている。そこから上へと続く腰のくびれも少し細めの制服のデザインのおかげで尻の大きさを強調していた。

「美しい」

 私は無意識につぶやいてしまった。目の前にある尻を人間の性的なパーツとしてではなく、一つの芸術作品として素直に美しいと思った。ちょうどよいサイズの制服ではあのピッチリとしたあの肉感的な美しさは出せないだろう。柔らかい弾力のある尻と伸縮性の乏しい制服の布地の対比によって、体を隠すために存在するはずの衣服が逆に体のラインを強調しているのだ。相反する性質の物がギリギリの均衡を保ちながら、大きな矛盾をはらむ。そこに世界の真理と呼べるものがあるように感じた。

 私はこの芸術作品を生み出した人物が誰なのか知りたくなった。この素晴らしい光景を目に焼き付けたいという思いはあったが、揺れる心を押さえつけ、目線を腰から上、背中へと登らせた。そこには茶色いポニーテールがゆらゆらと左右に揺れていた。

 彼女は半年前、「ポニーテール、似合っているね」と私が言ってから、毎日同じ髪形で出社するようになった総務の絢瀬さんだった。 

 

(現在、この作品の続編公開は未定となっております)